真の愛国

 

 首頁/  English / Japanese Entries/ 本土信徒 / 史話 / 家論述 / 宣教師 / 外國神父修女 / 原住民 日人列傳 / 賴永祥著作 馬偕周邊 / PCT/  劉家雜錄

郭維租《玉蘭莊通訊》127期 2010年10月15日; 曹永洋漢譯


人が自分の生れ育った故郷と国を愛するのは 自然の情である。その土地の自然を愛し、人を愛し、文化と歴史を愛する。そして多くの場合、外力の脅威、圧迫を受け、触発されて起る。日本の明治維新、中国の国民革命、抗日戦争等、近世の著明な例である。  

所で、自衛に始まった愛国運動は、実際上富国強兵の形を取り、そして一定の目標に達すると、今度は近隣に向に向って拡張するのが常である。「国防の第一線」は絶えず前進を続け、正義の自衛が、何時の間にか飽くなき侵略に変 質する事に、自分では気付かない。  

私は台湾に生れ育ち、漢民族の日本人として、青少年時代に十五年戦争(1931-1945)の激動を体験し、国家、民族の問題について、つぶさに辛酸をなめた。然し慈愛の神は私を憐み、戦時下の東京で、恩師矢内原先生を通して十字架の福音を示して下さり、私の眼から鱗が取れ天来の真理に目覚め、新生の感 謝と喜びに満たされた。そして戦後間もなく高橋三郎先生から40年以上にわたって懇切なお導きを受ける事が出来、神様に対し、恩師に対し、本当に感謝で一 杯です。   

茲に私のささやかな体験と感想を述べて、皆様の御参考に供したい。  

私の生まれた1922年は、日本の台湾統治五〇年(1895-1945)の半ばを少し過ぎ、多年の努力の功あって、社会の一般情勢はかなり安定し、台湾の子供にも進学の機会を与える事になり、私の母校となるべき台北二中と台北高校も創設された。台北には一中から四中まで有り、二中は主として台湾人学生の為であった。  

一 台北高等学校  

台北高校は当時旧制で、高等科は三年、各学年、文甲、文乙、理甲、理乙の四クラス、一クラス40名。台湾人一学年40名の内、半数は医科志望の理乙。理乙は日本人、台湾人半々で、一番問題が多い。  

日本人の級友は「愛国心」強く、「非常時」の波に煽られて勉強が手に付かず、柔道やラグビーに熱中して、授業中は疲れて居眠り。台湾人は得難い機会を活用して、教育熱心な先生方の講義を熱心に傾聴。そして日本の級友は台湾人を利己主義と非難し、自分達は国士を以て自任し威張り散らして居た。  

私共は日本の実情を知るには、矢張り内地の大学に進むのが良いとは思って居たが、私は家庭の事情で、とても可能性が無い。所が1941年三年の夏休みに一級上の江萬煊が東大から帰って来て、私共数人に東大行を奨めてくれた。心配の経費は、節約すればどうにかなるとの事。父母に相談し、何とか工面して下さる事になり、受験準備を急ぎ、東京の一番寒い時に行き、幸にして合格、4月に入学。

二 東大医学部  

さすがは天下の秀才揃い、台北高校と雰囲気が随分違う。向学心強く、教養高く、しかも時局に対し何がしかの見識有りそうだ。  

1943年新年に矢内原先生に導かれて 回心、新生、3月春休帰省の時、乗って居た高千穂丸が撃沈されて、太平洋で洗礼を受け、九死に一生を得、又東大にもどり、医学の勉強を継続。  

1944年、三年生の頃、戦況は急を告げ、東京は食料難、半ば空き腹だ。当時十人位のグループで各科を廻って実習して居た。ある日、指導のH助教授が、夕方お宅に招いて下さり、皆でおじゃがを御馳走になり、大変楽しかった。先生も御満足、「みんな久しぶりに満腹して良かったね!人間社会、色々ややこしい事が多いが、元々は単純なのだ。互いに友として交わり仲良く暮す。みんな兄弟、分け隔てをしない。それでいいのだ!」単純、善良な先生!所が先生、言葉をついで、「万一、どうしても従わぬ者が居れば、已むを得ない。打倒するのみ!」と仰言った。  

私どうした弾みか、日本の中国侵略の事で心が一杯だった為か、突然「先生、その場合情況をよく考えなければならないと思います。万一、強盗が人家に侵入して抵抗された場合、どちらが悪いのですか?」と言って了って、自分でハッとした。明らかに日本を強盗にたとえて居るでは無いか!とんでもない事を言って了った!もう後の祭り!途方に暮れた。所で、さすがは先生、怒りもせず落着いて、「僕の言ったのは一般論で、極端な特例には適用出来ないよ。」と言って下さった。更に意外にも、列座の級友も平然として居るでは無いか!やっと安心!案外当座の雰囲気を乱す事なく、楽しき集いを終えた。  

半世紀後、卒業五十周年記念会の席上で、私は昔、時として失言した際、皆様が寛大にお含み下さり、感謝に耐えないと挨拶したら、何人もの級友から、失言なんて、そんな記憶は無かったとの事であった。矢張り苦しい家計の中で、無理して東大に進学した甲斐が有った、感謝!良き先生と良き友人に恵まれた!  

三 級友M君  

同級のM君は、一度満州の 建国大学に入ったが、帰国して東大に入り直した。大の愛国者なのだ。ある日、私は呼び止められて「説教」された。  

「君は台湾出身だね。天皇陛下をどう思うか?」「それは国民たる者、元首として尊敬してますよ!」「標準的な答案だが、全く冷たい、感情が無い!我が天皇は天孫降臨以来、日本のみならず、天下に御光を輝かせる御方なのだ!」「君はクリスチャンの様だが、一体天皇とキリスト、どちらが偉いか?」「人間と神様、どうして比べる事が出来る?比べ様が無いでは無いか?」「何だと!君は天皇を人だと言うのか?それは不敬だぞ!」「何?天皇は人で無いと言うのか(人で無し)?それこそ不敬極まる!」「君は理屈をこねるのはうまいが、思想が悪い!君のキリスト教、先生は誰だ?」「矢内原先生」「道理で思想が悪いと思ったよ。先般ある講演会で彼は、日本の将来は神の義に従うか否かによって決まると言ったので、僕は立ち上って反対を表明した。我が国の前途は洋々、皇運無窮なのだ!」「君は困った人だが、級友だから、僕は密告しないよ。只よく言葉に注意せよ、危ない。」彼も根は正直者で、戦後の校友会誌に従来の不明と、前途の失望を表明した。  

結語   

真の愛国は正義と平和に基づくもの、善隣友好、国際協調と矛盾しない。内村先生は、「我は日本の為、日本は世界の為、世界はキリストの為、そしてすべては神の為」と言われた。我等も台湾と中華民族の為、世界人類の為、キリストの為、神の為に生きて行くべきである。真の愛国は、神を愛し隣人を愛するキリストの教訓に一致するのである。弱肉強食、自然淘汰は禽獣の道、四海同胞、和平共存は人類の道なのだ。

 

 首頁Home/ 本土信徒總檔 / 教會史話總 / 宣教師人物總檔 / 外國神父修女列傳 / 日人列傳總檔 / 原住民信徒 /  諸家論述